王位から遠かった宣祖が第14代王になれたのは何故か?
宣祖の家系図から、その理由を詳しく調べてみました。
また、後に後継者争いの火種となる家族についてもご紹介しています。
宣祖の家系図
宣祖は中宗の孫にあたりますが、直系ではなく、本来であれば王位から程遠い側室の孫でした。
しかし、先王の明宗と非常に親しい関係であったことが、王位継承に大きな影響を与えました。
<宣祖の家系図>
庶子の王が誕生した経緯
第12代国王・仁宗に子供がいなかったため、異母弟の明宗が第13代王となりました。
しかし、明宗と正室の一人息子・順懐世子が13歳で早世し、側室にも跡継ぎがいませんでした。
そのため、明宗の死後、中宗の側室の系統から次の王を探すことになりました。
そこで注目されたのが、明宗が特に可愛がっていた義弟・徳興君(トクングン)の三男・河城君(ハソングン)です。
明宗の母・文定王后も徳興君の母・昌嬪安氏を大変可愛がっており、王家に馴染みのある関係でした。
中宗には多くの側室とその子供がいましたが、他の王族と比較して徳興君の家族は特別な存在だったといえます。
明宗の王妃・仁順王后は生前、明宗の意中の子が河城君であることを伝えると養子に迎え、河城君は王位に就き宣祖となります。(燃藜室記述 巻十二、宣祖朝、故事本末、宣祖入掌大統)
宣祖は、庶子(側室から生まれた子供)として初めて即位した王です。
宣祖が即位したときの時代背景
宣祖の祖父・中宗はクーデターで王位に就いたため、臣下に頭の上がらない王でした。
晩年には、中宗の継妃・文定王后の一族が政権を握り、朝廷を掌握していました。
中宗が亡くなると、仁宗が即位しましたが、病弱だった彼はすぐに亡くなり、文定王后の息子の明宗が即位しています。
しかし、先代に引き続き在位当初から母親の文定王后が実権を握り、母方の叔父の尹元衡が朝廷を牛耳っていました。
宣祖が即位したときには、中宗、仁宗、明宗と続いた王権は大きく弱体化していました。
庶子の子であった宣祖には、この弱体化した王権を取り戻すことはできませんでした。
宣祖のプロフィール
宣祖の廟号は、当初、宣宗でしたが、正祖のときに宣祖に格上げされています。
これは、本来「祖」は新しい王朝を創建した王に使うものですが、日本の侵略(壬辰倭乱)による朝鮮王朝滅亡の危機を宣祖が救ったと評価したものでした。
生年:1552年11月11日
没年:1608年2月1日
享年:57歳
在位期間:1567年8月7日-1608年3月17日
姓・諱:李昖(イ・ヨン)(初名:鈞)
廟号:宣祖
父:徳興大院君
母:河東府大夫人鄭氏(鄭世虎の娘)
陵墓:穆陵
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宣祖の家族
宣祖には2人の正室と9人の側室の間に14男11女の子供をもうけました。
第14代王・宣祖 | |||
正室 | 懿仁王后 | 子女なし | |
仁穆王后 | 1男2女 | 貞明公主 | |
永昌大君(李㼁) | |||
公主(早世) | |||
側室 | 恭嬪金氏 | 2男 | 臨海君(李珒) |
光海君(李琿) | |||
仁嬪金氏 | 4男4女 | 義安君(李珹) | |
信城君(李珝) | |||
定遠君(李琈) | |||
貞慎翁主 | |||
貞恵翁主 | |||
貞淑翁主 | |||
義昌君 | |||
貞安翁主 | |||
貞徽翁主 | |||
順嬪金氏 | 1男 | 順和君(李) | |
静嬪閔氏 | 2男3女 | 仁城君(李珙) | |
貞仁翁主 | |||
貞善翁主 | |||
貞謹翁主 | |||
仁興君(李瑛) | |||
貞嬪洪氏 | 1男1女 | 貞正翁主 | |
慶昌君(李珘) | |||
温嬪韓氏 | 3男1女 | 興安君(李瑅) | |
慶平君(李玏) | |||
貞和翁主 | |||
寧城君(李㻑) | |||
貴人鄭氏 | 子女なし | ||
淑儀鄭氏 | 子女なし | ||
昭媛尹氏 | 子女なし |
宣祖の王妃
宣祖には二人の王妃がいました。
継室: 仁穆王后金氏
懿仁王后(ウイインワンフ)
懿仁王后は1569年に14歳で宣祖に嫁ぎました。
子供には恵まれず、後に側室の子供である光海君を養子にしました。
懿仁王后は、2度に渡る日本からの侵略(壬辰倭乱、丁酉倭乱)に避難を続け、1600年に体調を崩して亡くなりました。
仁穆王后(インモクワンフ)
仁穆王后は懿仁王后が亡くなったあとに、19歳で宣祖と結婚します。
1606年に待望の王子である永昌大君を生みますが、党派の争いに負けて光海君が即位しました。
すると、永昌大君は流刑の上、殺害され、仁穆王后の一族も粛清されてしまいます。
さらに、光海君は仁穆王后と娘の貞明公主を西宮(ソグン)という屋敷に幽閉してしまいました。
大妃の廃位を進言する臣下もいましたが、さすがに大妃を廃位することはできませんでした。
しかし、大妃と呼ばずに西宮と呼ぶなど廃妃同然の扱いを受けました。
仁穆王后の光海君に対する憎悪は想像を超えるものがあったと思われます。
宣祖の側室
宣祖には9人の側室がいました。
その中でも、恭嬪金氏と仁嬪金氏が最も寵愛を受けた側室です。
恭嬪金氏(コンビン キムシ)
恭嬪金氏は宣祖に最初に寵愛を受けた側室でした。
臨海君と光海君を生みますが、光海君を産んで2年後に亡くなりました。
仁嬪金氏(インビン キムシ)
仁嬪金氏は恭嬪金氏の死後、宣祖に寵愛された側室です。
義理の母である仁順王后に気に入られて側室になったと言います。
宣祖の寵愛を独占して、生涯に4男5女の子供を産んでいますが、1608年に宣祖が亡くなると宮殿を離れてしまいます。
そして、5年後の1613年に59歳で亡くなりました。
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宣祖の生涯
子供の頃の宣祖は頭もよく、常に書物を傍に置くほど学問を好み、絵画や書道に造詣が深かったといわれています。
そのため、宣祖は李退渓や李栗谷などの儒学の大家を人材として登用し、学問を重視する政策をとりました。
「儒先録」や「三網行実」など多くの書物を刊行して儒家の発展に寄与しています。
しかし、1592年、日本の朝鮮侵攻が始まると、宣祖は波乱万丈の生涯を送ることになります。
戦乱の世を勝ち取った秀吉の軍の勢いは凄まじく、宣祖は都を捨て避難することを余儀なくされ、これが民衆の信頼を大きく失うことになりました。
宣祖の逃避についてはこちら>>宣祖の生涯【壬辰倭乱の逃避に見る王の責任】
また、1602年、50歳を過ぎてから結婚した19歳の仁穆王后は待望の嫡子の永昌大君を生みますが、これが、その後の後継者争いの大きな火種となります。
1608年、宣祖は特に目立った政治的業績を残すこと亡く、その生涯を閉じています。
宣祖が登場するドラマ
日本に公開されている中で宣祖が登場するドラマです。
(1995年、キム・ソンオク)
・ホジュン 宮廷医官への道
(1999年、パク・チャンファン)
・王の女(2003年、イム・ドンジン)
・不滅の李舜臣
(2004年、チョ・ミンギ)
・ホジュン〜伝説の心医〜
(2013年、チョン・ノミン)
・火の女神ジョンイ
(2013年、チョン・ボソク)
・王の顔(2014年、イ・ソンジェ)
・軍師リュ・ソンリョン
(2015年、キム・テウ)
・華政(2015年、パク・ヨンギュ)
・魔女宝鑑 〜ホジュン、若き日の恋〜
(2016年、イ・ジフン)
・医心伝心〜脈あり!恋あり〜
(2017年、チョ・スンヨン)
( )内は演じた俳優
まとめ
宣祖は本来、家系図から見て王位から遠い立場にありましたが、王族間の特別な関係を背景に第14代国王となりました。
初の庶子出身として即位した王でしたが、壬辰倭乱時の彼の行動は、民衆からの信頼を大きく失う結果を招いています。
また、50歳を過ぎて得た嫡子は家族間の対立や後継者争いを生むなど、その後の朝鮮王朝の歴史に大きな影を落とすことになりました。