ノクドゥ伝でカン・テオが演じて注目を集めのが綾陽君(ぬんやんぐん)です。
綾陽君はクーデター(仁祖反正)で光海君を倒して、第16代国王・仁祖(インジョ)として即位した人物です。
実在の綾陽君とはどんな人物だったのか。
綾陽君の家系図から詳しく調べてみました。
綾陽君(ぬんやんぐん)の家系図
綾陽君(ぬんやんぐん)は第14代国王・宣祖と側室・仁嬪金氏の間に生まれた三男・定遠君の息子として生まれました。
つまり、宣祖の側室の孫という王位継承者からは程遠い存在でした。
綾陽君の母は左参賛・具思孟の娘である仁献王后(追尊)です。
<綾陽君の家系図>
光海君は父親の腹違いの兄、綾陽君の伯父さんにあたります。
宣祖 第14代王 |
正室/側室 | 子供 | 孫 | 備考 |
正室 | 仁穆王后 | 永昌大君 | 死罪 | |
側室 | 恭嬪金氏 | 臨海君 | 死罪 | |
光海君 | 第15代王 | |||
仁嬪金氏 | 定遠君 | 綾陽君 | 第16代王 | |
綾原君 | ||||
綾昌君 | 謀反の罪で流刑 |
光海君は国王に即すると、自分の存在の脅威となる正室の子・永昌大君と実の兄の臨海君を死罪としました。
そして、光海君は綾陽君の弟で王の器と言われた綾昌君も謀反の罪で流刑にしてしまいました。
綾昌君は流刑地で自決しています。(殺害されたとも言われています)
これを知った綾陽君の父・定遠君はショックのあまり亡くなってしまいます。
綾陽君の光海君に対する恨みは計り知れないものがありました。
これが、綾陽君が光海君に対してクーデターを起こした直接の原因と言われています。
綾陽君の妻と子供たち
綾陽君(ぬんやんぐん)は即位前に結婚した仁烈王后との間に四人の男の子がいました。
仁烈王后が亡くなって迎えた継妃・荘烈王后との間には子供はできませんでした。
<綾陽君の正室/側室とその子供>
第16代国王 仁祖(綾陽君) | ||||
正室 | 仁烈王后 | 4男 | 昭顕世子 | |
鳳林大君 | 第17代王・孝宗 | |||
麟坪大君 | ||||
龍城大君 | ||||
荘烈王后 | 子女なし | |||
側室 | 貴人趙氏 (廃位後賜死) |
2男1女 | 崇善君 | |
楽善君 | ||||
孝明翁主 | ||||
貴人張氏 | ||||
淑儀羅氏 |
最初の正室・仁烈王后
仁烈王后は綾陽君(ぬんやんぐん)が王になる前に結婚しています。
綾陽君が即位する前に、昭顕世子、鳳林大君、麟坪大君の3人の息子を産んでいました。
綾陽君の弟の綾昌君が謀反の罪で死罪になり、不遇な境遇になりますが、内助の功で誠心誠意、夫を助けたと言われています。
綾陽君が即位して王妃になった後も、女官たちへの気配りを怠らず、気品ある王妃として振る舞いました。
ドラマ「華政」に登場する仁烈王后も大妃への配慮を怠らず、規律を重んずる王妃として描かれています。
1636年、仁烈王后は42歳の高齢で妊娠しますが、残念ながら死産の上、自らも亡くなってしましました。
悲劇の子供・昭顕世子
綾陽君(ぬんやんぐん)は即後して第16代国王・仁祖になると清の大軍に攻められて大敗北をしてしまいます。
なんと、清の皇帝の前で土下座して謝罪をさせられます。
そして、息子の昭顕世子(ソヒョンセジャ)と鳳林大君(ポンニムテグン)を人質として清に差し出すことになりました。
人質になった昭顕世子夫婦ですが、清での生活は素晴らしいものだったようです。
8年後に人質生活が開放されて、帰国すると思わず清の素晴らしさを仁祖に説明して大ヒンシュクをかいます。
土下座までさせられた清は仁祖の天敵でした。
その二ヶ月後に昭顕世子は33歳で不審な急死をしてしまいます。
詳しくは>>昭顕世子(ソヒョンセジャ)の家系図【不可解な死因の悲劇の世子】
最悪の側室・ 貴人趙氏
綾陽君(ぬんやんぐん)の側室・貴人趙氏(ペクイン チョシ)は酷い悪女として知られています。
自分の息子を王位に就けるために、清より帰国した昭顕世子を毒殺、更には昭顕世子の妻の姜氏に仁祖殺害の濡れ衣を着せたのも貴人趙氏の陰謀と考えられています。
仁祖の寵愛を良いことに、やりたい放題だったのです。
詳しくは>>仁祖の家系図【朝鮮最悪の屈辱と疑心暗鬼の生涯】 で紹介しています。
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綾陽君を国王とした仁祖反正
仁祖反正(インジョバンジョン)とは、1623年3月13日に西人派が宮廷で起こしたクーデターです。
仁祖に恨みを持つ西人派が綾陽君を担いで光海君を廃位させるために決起しました。
このクーデターにより、本来王位を望める立場ではなかった綾陽君が第16代国王(仁祖)になることができました。
このクーデターの起源は光海君の国王即位にさかのぼります。
光海君は即位すると、王位を脅かす永昌大君を殺害して、仁穆王后を幽閉します。
そして、永昌大君を指示する小北派を排除、前国王の宣祖から仁穆王后と永昌大君を支持するように遺命されていた西人派を次々と追放してしまいました。
また、光海君は王の器と言われた綾陽君の弟の綾昌君(ヌンチャングン)を殺害してしまいます。
これが原因で綾陽君の父親である定遠君も亡くなります。(自害とも言われています)
綾陽君の光海君に対する恨みは想像を絶するものがありました。
こうした背景の中、小北派、西人派、綾陽君が遂にクーデターを決心しました。
これが「仁祖反正」です。
「反正」には、間違ったものを正すという意味があります。
なぜ、このクーデターが「仁祖反正」と言われるのでしょうか?
それは、仁穆大妃がこのクーデターは正しいと大義名分を与えたからです。
クーデターが成功した綾陽君は、幽閉された仁穆大妃のもとに行き光海君の追放を報告しました。
殺意を持つほど光海君を恨んでいた仁穆大妃は大変喜び、クーデターに大義名分を与えて綾陽君を王として認めます。
これで、クーデターは光海君の間違った政治を仁祖が正した出来事として「仁祖反正」となったのです。
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綾陽君の生涯
1595年11月7日、綾陽君(ヌンヤングン)は定遠君の長男として生まれました。
13歳のとき、綾陽君に封じられています。
1610年、韓浚謙の娘(仁烈王后)と結婚、1612年1月4日には、長男(昭顕世子)が生まれました。
さらに、1619年に次男の鳳林大君(孝宗)、1622年に三男の麟坪大君(李㴭)が生まれています。
運命の仁祖反正が起こる
1623年3月13日、仁祖反正が起こり、光海君は廃位され、綾陽君が第16代王(仁祖)として即位しました。
翌年の1624年には、四男の龍城大君(李滾)が生まれています。
1625年には、長男が王世子に冊封されました。
後金(清)に侵略された苦難の時代
1627年、丁卯胡乱が起こりました。
後金軍が朝鮮に侵略、不利になった朝鮮が後金軍と兄弟関係の和議に応じています。
1636年、後金のホンタイジが皇帝に即位、国号を清と改めました。
そして、今度は朝鮮に対して臣従するよう要求してきました。
朝鮮がこれを拒否すると、1636年12月2日、清はホンタイジ自ら10万の兵を率いて朝鮮に攻め込んできました。
丙子の乱です。
1637年1月30日、朝鮮は耐えきれず降伏します。
仁祖(綾陽君)が三田渡で三跪九叩頭の礼(土下座)を行い、ホンタイジに許しを請う、屈辱を味わいました。
勝利したホンタイジは50万の朝鮮人捕虜と王子達を人質にして満州に帰還しています。
貴人趙氏を寵愛する
清に屈辱を味わった仁祖(綾陽君)は側室の貴人趙氏を寵愛し始めます。
1637年、貴人趙氏は孝明翁主を生むと、1639年に、崇善君(李澂)、1641年に楽善君(李潚)を生んでいます。
1638年12月2日、荘烈王后を王妃に迎えていますが、仁祖(綾陽君)から寵愛を受けることはありませんでした。
反対に仁祖(綾陽君)の寵愛を独占した貴人趙氏は、虎の威を借りて、楯突く人は徹底的に罰し、やりたい放題だったといいます。
昭顕世子の突然の死
1645年2月、清に人質となっていた昭顕世子が解放され、帰国しました。
しかし、帰国から2ヶ月後の4月26日、昭顕世子が突然亡くなります。
貴人趙氏の陰謀説の噂も流れましたが、真相は不明のままでした。
昭顕世子が亡くなり、鳳林大君が慌てて清から帰国、世子となっています。
仁祖(綾陽君)の最後
1649年6月17日、仁祖(綾陽君)が亡くなりました。
仁祖(綾陽君)は坡州の長陵(チャンヌン)に最初の妃であった仁烈王后を一緒に眠っています。
長陵は仁烈王后が亡くなった翌年の1636年に、坡州北部の雲川里(ウンチョンり)に双墳で造成されました。
しかし、火災が頻発したり、蛇やさそりが石物の隙間に巣を作っていたため、好ましくない場所として、1731年に現在の位置に移されています。
綾陽君(ぬんやんぐん)のドラマ
仁祖は王としての功績はほとんどありませんが、話題性のある生涯から扱ったドラマは多数あります。
・朝鮮王朝五百年 傀儡王 仁祖
(1986年、リュ・インチョン)
・宮廷女官キム尚宮
(1995年、パク・ジンヒョン)
・王の女(2003年、アン・ホンジン)
・イルジメ〜一枝梅
(2008年、キム・チャンワン)
・必殺! 最強チル
(2008年、チェ・ジョンウ)
・推奴(2010年、キム・ガプス)
・馬医(2012年、ソヌ・ジェドク)
・花たちの戦い -宮廷残酷史-
(2014年、イ・ドックァ)
・三銃士(2014年、キム・ミョンス)
・華政(2015年、キム・ジェウォン)
・ノクドゥ伝(2019年、カン・テオ)
・ポッサム-運命を盗む
(2021年、イ・ミンジェ)
( )内の名前は綾陽君(仁祖)を演じた俳優の名前です。
次の4作品は即位前の綾陽君(ぬんやんぐん)の時代からを扱った作品です。
(1995年、パク・ジンヒョン)
・王の女(2003年、アン・ホンジン)
・華政(2015年、キム・ジェウォン)
・ノクドゥ伝(2019年、カン・テオ)
特に、最も新しい作品のノクドゥ伝では、カン・テオが次第に豹変する綾陽君を演じて話題になりました。
まとめ
綾陽君(ぬんやんぐん)は、王位継承とは程遠い存在でしたが、光海君を倒すクーデターに担ぎ出されて王位に付きました。
王になった後も、清に対する敗北の土下座や息子・昭顕世子の急死など話題の多い王様でした。
また、王の近くにはお決まりの悪女がいるなどドラマの素材としては打って付けの王様だったようです。