韓国時代劇に登場する王様や王妃の衣装は本当に華やかです。しかし、実はそれらの多くが史実ではありえない衣装なのです。
この記事では、なぜ韓国時代劇の衣装が史実と異なるのか?時代劇の代表作「チャングム」や「トンイ」などを例に詳しく解説します。
韓国時代劇のカラフルな衣装は創作だった
韓国時代劇で描かれる王族や女官の衣装は時代考証的にはほとんどが創作です。
当時の朝鮮王朝では天然染料が主流で、現在のようにカラフルな色を出すことは難しかったとされています。そのため、ドラマに登場するような赤・青・緑の鮮やかな衣装は、実際の宮廷では存在しませんでした。
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韓国時代劇の衣装を現在のようにカラフルにした仕掛け人は韓国時代劇の巨匠イ・ビョンフン監督です。
当初、時代劇は全く若者に人気がありませんでした。時代劇は古臭い、くすんでいる、面白くないもの だったのです。
時代劇をなんとか若者にも見てほしいと思ったイ・ビョンフン監督は次のことを行いました。
・物語の展開をスピーディーにする
・セリフを現代語に近づける
・音楽をニューエイジ音楽を採用する
この試みが功を奏し、イ・ビョンフン監督の作品は若者を含む子供からお年寄りまで全世代に受け入れられ、次々とヒット作が生まれました。
【PR】スポンサーリンクドラマ「チャングム」の衣装は総額4千万円
代表作「宮廷女官チャングムの誓い」では、主演のイ・ヨンエだけで約60着。登場人物全体では500着以上、総額約4千万円という当時としては異例の衣装費が投じられました。
女官たちの衣装はパステルカラーを基調とした創作の色合いで統一されており、特にイ・ヨンエには肌映りを意識してエメラルドグリーンのチマチョゴリが選ばれました。
イ・ビョンフン監督の「女性を最も美しく見せる色」へのこだわりが随所に感じられます。ちなみに、人気のあった水剌間(スラッカン)での前掛けスタイルも完全な創作です。
豪華な王妃の衣装は性格を反映した色合い
イ・ビョンフン監督の代表作「トンイ」でも、時代劇ならではの豪華な王妃の衣装を見ることができます。王妃は唐衣(タンイ)と呼ばれる刺繍入りの上着とチマを身にまとい、髪にはピニョと呼ばれる龍の彫刻が施されたかんざしを付けています。
監督は登場人物の性格を色で表現することにもこだわり、張禧嬪(チャン・ヒビン)には黒や濃紫といった強い色を用いて、情熱的で激しい気性を表現させました。
このように、色そのものが登場人物の性格や気性を表す演出となっているのです。
詳しくは>>トンイで分かる王妃の衣装【豪華で色鮮やかな唐衣とかんざし】
韓国時代劇ドラマの豪華な鎧も創作?
韓国時代劇でよく見る豪華な鎧も、実は史実とは異なる創作です。たとえば「朱蒙」や「階伯」に登場する豪華な鎧は、実際のものとは大きく異なり、当時はもっと質素で機能性重視のデザインだったとされています。
<朱豪の豪華な鎧>
実は、「朱蒙」、「階伯」のキム・グノン監督は、イ・ビョンフン監督の下で学んだ人で、「チャングム」では助監督を務め、「イ・サン」では共同監督を務めました。そのため、イ・ビョンフン監督の「華やかで映える演出哲学」が彼の作品にも引き継がれています。
ところで、実際の鎧はどんなものだったのでしょうか?
「私の国」の鎧の色合いがやや史実に近いと言えますが、それでも画面映えを重視したデザインがかなり施されています。テレビ的な見栄えを考えれば、質素な鎧よりも豪華な方が人気を集めるのは当然といえるでしょう。
<私の国の鎧>
まとめ
韓国時代劇の衣装が史実とは異なるのは、時代劇を広めようとする監督たちの創意工夫の結果でした。そこには、地味で退屈とされた時代劇を、何とか若者にも愛されるエンタメに変えたいという強い思いがありました。
確かに歴史的事実とは異なりますが、綺麗な女優が色鮮やかな衣装をまとうことで物語が華やかになり、視聴者の心を惹きつけます。
史実に忠実でなくても、ドラマとしての魅力を高めた「ありえない衣装」は、韓国時代劇を世界的な人気ジャンルへと導いた立役者でした。