仁祖の家系図【朝鮮最悪の屈辱と疑心暗鬼の生涯】

多くのドラマに登場する仁祖は王位からは程遠い王族でした。

屈辱と疑心暗鬼の生涯を送った仁祖とはどんな人物だったのか。

仁祖の家系図から詳しく調べてみました。

仁祖の家系図

仁祖（イジョン）は第14代王・宣祖の孫で、第16代国王です。

父の定遠君は側室の子であり、仁祖は王位継承からは遠い立場でしたが、1623年、光海君を廃位するクーデター（仁祖反正）によって王になっています。

下記は仁祖の家系図です。

＜仁祖の家系図＞

仁祖はどんな王だったのか？

仁祖は幼い頃から喋ることは苦手で、本を読むことが好きな内向的な子どもでした。

祖父の国王宣祖からは大変寵愛を受けて育ちましたが、カリスマ性は乏しかったようです。

仁祖プロフィール

 父・定遠君と弟・綾昌君の悲劇

墓碑によると、仁祖の父・定速君は、容姿に優れ、優しい性格で宣祖から大変可愛がられたようです。

しかし、実際の定速君は酒好きで、暴力的だったと言われています。

弟・綾昌君の悲劇

光海君が王位に就くと、定速君は光海君から睨まれないように静かに暮らしていました。

しかし、三男の綾昌君は優秀で王の器と言われるほど目立った存在になります。

その結果、光海君に謀反の罪を着せられ流刑となり、流刑地で自決してしまいます。

父・定遠君の死

これを知った定速君は、ショックで心を病み、亡くなりました。

自害したとも言われています。

この一連の事件が、仁祖がクーデターに加担する大きな動機となったのです。

清との戦いと屈辱の降伏（三跪九叩頭の礼）

仁祖が即位してから、後金（後の清）に二度の大侵略を受けています。

1627年：丁卯胡乱（チョンミョホラン）
1636年：丙子胡乱（ピョンジャホラン）

丁卯胡乱（チョンミョホラン）

丁卯胡乱のときは、後金が3万の軍隊で怒涛のごとく朝鮮に侵攻、仁祖と大臣たちは、恐怖におののき江華島に逃げ込んでいます。

朝鮮側は和議に応じて盟約を結び、名目上、後金と朝鮮は「兄弟の関係」となったのです。

丙子胡乱（ピョンジャホラン）

1636年、後金は国名を清と改称、ホンタイジは朝鮮に君臣の関係を迫りました。

仁祖はこれをはねつけますが、怒ったホンタイジは10万の兵を率いて朝鮮に攻め込み、あっという間に漢城（ソウル）を陥落させてしまいました。

屈辱の三跪九叩頭の礼

清の侵攻の速さに、仁祖は降伏を余儀なくされ、漢江南岸の三田渡でホンタイジに対して屈辱的な三跪九叩頭の礼を行いました。

また、ホンタイジが仁祖に下した過酷な要求は後世の朝鮮に大きな負担となりました。

このときの要求は詔諭（韓国国立図書館に保存）に記載されています。

詔勅（しょうちょく）： 国の主権者が命令を伝える公文書

昭顕世子との確執と謎の死

清に降伏した仁祖は、清の臣下となり、仁祖の息子3人を人質として清に送ることを要求されています。

長男の昭顕世子（ソヒョンセジャ）は清に8年間滞在し、現地の官僚と友好関係を築き、朝鮮の利益を図ろうと尽力しました。

1644年、昭顕世子が解放され朝鮮に帰国しますが、仁祖は昭顕世子に冷たく接します。

そして、なんと昭顕世子は帰国後、2ヶ月で亡くなってしまいました。

死因は明らかではありませんが、仁祖に対する疑念は今でも残ったままです。

側室の貴人趙氏は最悪の悪女

仁祖の側室・貴人趙氏（ペクイン チョシ）は王の寵愛をいいことに、気に食わない人を徹底的に排除した悪女として知られる人物です。

清に心酔した昭顕世子の夫婦を嫌い、昭顕世子を殺した疑いももたれています。

更に、昭顕世子の妻の姜氏（カンシ）に仁祖毒殺の嫌疑をかけたのも、彼女の仕業ではないかと言われています。

また、仁烈王后の死後、入宮したのが荘烈王后にも酷い嫌がらせをしたといいます。

しかし、後ろ盾の仁祖が死ぬと立場は逆転、最後は荘烈王后による告発（呪詛の罪）で自害させられました。

貴人趙氏は悪女として、ドラマ「恋人」、「華政」、「馬医」などに登場しています。

仁祖が登場するドラマ

仁祖は朝鮮王朝の転換点を描く物語で、しばしば登場人物として取り上げられています。

（　）内の名前は仁祖を演じた俳優

まとめ

仁祖は本来、王位に就く立場ではありませんでしたが、クーデターによって、祭り上げられた王でした。

ゆえに王としての自信を持てず、側近や側室に翻弄され、更に、清への屈辱や息子の死という悲劇の連続に見舞われました。

王の威厳を保てず、疑心暗鬼に満ちた人生を送った仁祖の生涯は、朝鮮王朝史の中でも特異なもので、ドラマや学者の研究課題として多く取り上げられています。