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【詳しく解説】朝鮮王朝時代の朝廷の組織

韓国時代劇を観るのに役立つ用語をまとめています。

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朝鮮王朝時代の朝廷の組織

朝廷とは王様を中心として、政治を行う機関、場所のことです。

 

朝廷の組織一覧

名称 読み方 概要
議政府 ウィジョンブ 領議政、左議政、右議政を中心とした国家を運営する最高行政機関。6つの中央官庁(六曹)が所属する
六曹 ユクチョ 国政の各分野の実務を担当
司憲府 サホンブ 官僚の不正を監視する官庁
司諫院 サガヌォン 王に諫言して政治の非を指摘する官庁
弘文館 ホンムングァン 王の諮問に応える官庁。蔵書管理、政策の草案作りも担当
承政院 スンジョンウォン 王の秘書室。王命の伝達と臣下の上奏の報告をする官庁
義禁府 ウィグムブ 王命に従い重罪人を取り調べた官庁。最高の司法機関
漢城府 ハンソンブ 漢城府の司法と行政を担当。都庁に相当する
捕盗庁 ポドチョン 漢城府及び京畿道の警備、治安維持を担当。警視庁に相当する
宣恵庁 ソネチョン 米、布、金銭などの租税を管理する官庁
内禁衛 ネグミ 王室を護衛する軍隊。別名親衛隊
兼司僕 キョムサボク 騎兵を中心に構成された軍隊。王室の護衛を担当
羽林衛 ウリミ 王の親衛隊の一つ
春秋館 チュンチュグァン 実録編纂を担当する機関
成均館 ソンギュングァン 朝鮮王朝の最高教育機関
世子侍講院 セジャシガンウォン 世子の教育を担当。略して侍講院とも呼ぼれる
世子翊衛司 セジャイグィサ 世子の武芸教育と護衛を担当。略して翊衛司とも呼ばれる
内医院 ネイウォン 王や王室の医療を担当する官庁
典医監 チョニガム 薬剤の調達や医師の教育(医療行政)を担当した官庁
恵民署 ヘーミンソ 庶民の医療を担当する官庁
活人署 ファリンソ 貧民の救済を担当する官庁。伝染病発生時の対策医院
礼賓寺 イェビンシ 外国使臣などの賓客を接待する役所
図画署 トファソ 宮中の絵に関する業務全般を担当
掌楽院 チャンアグォン 朝廷の儀式などで音楽の演奏を担当
司饔院 サオンウォン 王室の食事全般を担当
水刺間 スラッカン 王室の料理を担当。司饔院に所属
分院 プノン 王室の陶器製造を担当。司饔院に所属
内侍府 ネシブ 王の世話。宮中の雑務を担当
内需司 ネスサ 宮殿用の米穀、麻布、木綿、雑品などの管理
訓練院 フルリョンウォン 武官の選抜や武芸の訓練を担当
五衛 オウィ 全国を5つに分けて防衛。後に縮小され中央の軍隊組織となる
平市署 ピョンシソ 市場を監督する部署
掌隷院 チャンネウォン 奴婢の管理する部署
尚衣院 サンイウォン 王の衣服を作る部署
造紙署 ジョジソ 宮中で使う紙の管理・供給
承文院 スンムンウォン 外交文章の管理する部署
宗親府 ジョンチンブ 王族が所属する官庁
忠勲府 チュンフンブ 功臣や王の外戚が所属
中枢府 チュンチュウォン 朝鮮中期以降は実務がなくなり、武官の名誉職となった
五衛都摠府 オウィトチョンブ 五衛の統括

恵民署も活人署も庶民の医院の役目を持っていましたが、恵民署は宮廷内、活人署は宮廷外に設置されていました。

 

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議政府と六曹

議政府(ウィジョンブ)は、すべての政治と全役人を統括する朝鮮の最高行政機関です。

日本で言う内閣です。

領議政(ヨンイジョン)が総理大臣左議政(チャイジョン)と右議政(ウイジョン)が副総理に相当しました。

領議政、左議政、右議政の三役を称して、三政丞(サムジョンスン)と呼ばれていました。

 

議政府の下には、実際に国政の業務を担当する六曹と呼ばれる官庁が存在しました。

日本の中央官庁です。

判書(パンソ)が大臣参判(チャムパン)が次官に相当しました。

 

この行政機関の基礎を作ったのは第3代国王の太宗です。

太宗は最上位に議政府をおいて、その下に六曹を置く行政の組織を初めて作りました。

 

第3代王・太宗と第7代王・世祖は王権を強化するために、六曹の長である各判書に直接、王が指示して報告を受ける六曹直啓制を採用して、議政府の権限を制限していました。

しかし、その他の国王の時代では議政府が国政を担う議政府署事制を採用し、王と六曹とのやり取りは承政院が行っていました。

 

議政府の構成

総理大臣にあたるのが領議政(ヨンイジョン)、副総理にあたるのが左議政(チャイジョン)と右議政(ウイジョン)です。

読み 品階 人数
領議政 ヨンイジョン 正一品 1人
左議政 チャイジョン 正一品 1人
右議政 ウイジョン 正一品 1人
左賛成 チャチャンソン 従一品 1人
右賛成 ウチャンソン 従一品 1人
左参賛 チャチャムソン 正二品 1人
右参賛 ウチャムソン 正二品 1人
舎人 サイン 正四品 2人
検詳 コンサン 正五品 1人
司録 サロク 正八品 2人

 

六曹(ユクチョ)の構成

六曹はその名の通り、6つの官庁から構成されています。

六曹のトップは大臣に相当する判書(パンソ)が務めました。

六曹 読み 担当
吏曹 イジョ 文官の人事
戸曹 ホジョ 国家財政
礼曹 イェジョ 王室業務、儀礼
兵曹 ピョンジョ 国の軍事
刑曹 ヒョンジョ 国の司法や刑罰
工曹 コンジョ 公共事業などの社会事業

六曹の下には属衛門(ソガムン)と称される下位組織が置かれ、実際の業務を分担していました。

 

吏曹(イジョ)

文官の人事を担当しました。

文官の任命、人事考課などを実施しました。後に武官・女官の人事権も与えられました。

そのため、強い権限を持つ重職でした。

日本の総務省にあたります。

<吏曹の主な属衛門>

属衛門 業務内容
内侍府 王の世話。宮中の雑務を担当
内需司 宮殿用の米穀、麻布、木綿、雑品などの管理

 

戸曹(ホジョ)

国家財政を担当しました。

租税管理、貨幣鋳造、人口調査などを実施しました。

日本の財務省にあたります。

<戸曹の主な属衛門>

属衛門 業務内容
平市署 市場を監督する部署

 

礼曹(イェジョ)

王室業務、儀礼を担当しました。

婚礼、儀式、外交、祭事、教育などを実施しました。

日本の文部科学省にあたります。

<礼曹の主な属衛門>

属衛門 業務内容
内医院 王や王室の医療を担当する官庁
弘文館 王の諮問に応える官庁。蔵書管理、政策の草案作りも担当
春秋館 実録編纂を担当する機関
成均館 朝鮮王朝の最高教育機関
承文院 外交文章の管理する部署
図画署 絵に関する業務全般を担当
掌楽院 朝廷の儀式などで音楽の演奏を担当
世子侍講院 世子の教育を担当。単に侍講院とも呼ばれる

 

兵曹(ピョンジョ)

国の軍事を担当しました。

国の防衛や武官の人事などを実施しました。

軍権を握っているため、六曹の中でも特に強い権限を持つ部門でした。

日本の防衛省にあたります。

<兵曹の主な属衛門>

属衛門 業務内容
五衛 全国を5つに分けて防衛。後に縮小され中央の軍隊組織となる
訓練院 武官の選抜や武芸の訓練を担当

 

刑曹(ヒョンジョ)

国の司法や刑罰を担当しました。

裁判所の機能を果たしました。

日本の法務省にあたります。

<刑曹の主な属衛門>

属衛門 業務内容
掌隷院 奴婢の管理する部署

 

工曹(コンジョ)

公共事業などの社会事業を担当しました。

宮廷、公共建造物、交通路などの土木工事や建設などを実施しました。

日本の国土交通省にあたります。

<工曹の主な属衛門>

属衛門 業務内容
尚衣院 王の衣服を作る部署
造紙署 宮中で使う紙の管理・供給

 

六曹の官職と品階

六曹のトップには大臣に相当する判書と次官に相当する参判がいました。

官職 読み方 品階 備考
判書 パンソ 正二品 1人
参判 チャムパン 従二品 1人
参議 チャムイ 正三品堂上 1人
参知 正三品堂下 1人
正郎 チョンラン 正五品 3人
佐郎 チャラン 正六品 3人

時代劇ではよく、吏曹判書(イジョパンソ)などの官職名で呼ばれる人が登場していますね。

 

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義禁府、司憲府、捕盗庁、内禁衛、漢城府

時代劇でよく登場するけど、よく分からないのが義禁府、捕盗庁、司憲府、内禁衛、漢城府ではないでしょうか。

簡単に言うと、謀叛など大罪を取り締まるのが義禁府、一般の庶民の犯罪を取り締まるのが捕盗庁、役人の不正を取り締まるのが司憲府、王様の護衛が内禁衛、首都と担当する部署が漢城府です。

詳しく説明していきます。

 

義禁府(ウィグムブ)

庶民の一般犯罪ではなく、謀反などの大罪を犯した重罪人を調べる王直属の官庁です。

王権維持のために王に謀叛を企てる悪人を取り締まるのが主要な任務です。

だから、時代劇では王命で拷問をしている場面がよく出てきますが、拷問を執行している部署が義禁府です。

 

義禁府は、王様の直属の部隊として諜報活動、消防活動、儒教的倫理の監視・取締なども行っていました。

義禁府は現在の高等裁判所の前身にあたり、最高の司法機関です。

<官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
判事 パンソ 従一品 1人
知事 チサ 正二品 1人
同知事 トンジサ 従二品 2人
経歷 キョンニョン 従四品 2人
都事 トサ 従五品 4人

総勢250名程度の人が所属していました。

トンイでは、オ・テソクの部下のオ・ユンが昇格して義禁府知事(ウィグムブチサ)になりました。

 

司憲府(サホンブ)

司憲府は一般の庶民ではなく、官僚の不正や違法行為を取り締まる官庁です。

司憲府は不正や違法行為があった官僚の官職を取り上げることができるなど強い特権を持っていました。

但し、中級役人(品階が五品以下)が取締の対象であり、上級官僚を取り締まるには刑曹や漢城府、義禁府と協力する必要がありました。

 

ヘチ 王座への道でヨジが所属していたのが司憲府です。

タイトルのヘチは、善悪を裁く伝説の神獣のことで、司憲府のシンボルと言われています。

オープニングに登場する石の像ですね。

<官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
大司憲 テサホン 従二品 1人
執義 チベ 従三品 1人
掌令 チャンロン 正四品 2人
持平 チピョン 正五品 2人
監察 カムチャル 正六品 13人

 

捕盗庁(ポドチョン)

盗賊や一般の庶民の犯罪人を取り締まる官庁です。

現在の警察に相当し、実際に捕盗庁は現在の警察機関になっています。

 

主に、漢陽(現在のソウル)及び京畿道(ソウル周辺)の警備に当たりました。

担当する地域により、右捕盗庁(ウポドチョンン)と左捕盗庁(チャポドチョン)に別れていました。

右捕盗庁が西部と北部を、左捕盗庁が東部と南部を担当していました。

<官職と品階>
右捕盗庁と左捕盗庁のそれぞれに次の官職の人がいました。

官職 読み方 品階 備考
捕盗大将 ポドテジャン 従二品 1人
従事官 チョンサグァン 従五品 3人
部将 ブジャン 4人
軍士 グンサ 品階なし 現場で任務にあたる

 

内禁衛(ネグミ)

内禁衛は王を護衛する部隊で親衛隊とも呼ばれていました。

王直属の独立した機関です。

当然、24時間365日、交代で勤務していました。

人員は200名程度です。

<官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
内禁衛将 ネグミジャン 従二品
内禁衛将 ネグミジャン 正三品堂上官

トンイの強い味方ソ・ヨンギの最終的な官職が内禁衛将(ネグミジャン)でした。

 

漢城府(ハンソンブ)

王宮のある首都の行政や司法、治安維持などを担当した国王直属の官庁です。

1394年に李成桂が漢陽(ハニャン)を首都としましたが、1395年に漢陽(ハニャン)は漢城(ハンソン)と 改名されます。

漢城は現在のソウル特別市です。

従って、漢城府は日本の都庁のような官庁です。

<官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
判尹 パニュン 正二品
庶尹 ソユン 従四品
判官 パングァン 従五品

ドラマ「トンイ」で王様が身分を騙して名乗っていたのが、この漢城府の判官でした。

 

三司の司憲府、司諫院、弘文館

司憲府(サホンブ)、司諫院(サガヌォン)、弘文館(ホンムングァン)を合わせて三司(サムサ)と呼びました。

三司は王様に直接物を申して、王様の横暴や官僚の汚職に厳しく目を光らせる部門でした。

三司には、王や官僚の利己的な専断を抑制する機能がありました。

専断とは「自分だけの考えで勝手に物事を決めて行うことです。

 

司憲府(サホンブ)

前述した、官僚の不正や違法行為を取り締まる官庁です。

<官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
大司憲 テサホン 正三品 1人
執義 チビ 従三品 1人
掌令 チャンギョン 正四品/従四品 2人
侍平 チピョン 正五品 2人
監察 カムチャル 正六品 2人

 

司諫院(サガンウォン)

司諫院は、王に諫言して政治の非を指摘する役目を担った官庁です。朝鮮王朝では、たとえ王命であっても明らかに誤りであれば、王に諫言することができました。

<官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
大司諫 テサガン 正三品 1人
司諫 サガン 従三品 1人
献納 ホンナプ 従五品 1人
正言 チョンオン 正六品 2人

 

弘文館(ホンムングァン)

弘文館は、宮廷内の蔵書を管理していましたが、それだけでなく、王の諮問に応えたり、政策の草案作りなど非常に重要な部門でした。

ドラマ「トンイ」でイ・ソンゲの父親は弘文館の副提学(プジェハク)でした。

だから、王様に直接話しができる立場だったんですね。

<官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
領事 ヨンサ 正一品 1人
大提学 テジェハク 正二品 1人
提学 テハク 従二品 1人
副提学 プジェハク 正三品堂上官 1人
直提学 チクチェハク 正三品堂下官 1人
典翰 チョナン 従三品 1人
應教 ウンギョ 正四品 1人
副應教 プウンギョ 従四品 1人
校理 キョリ 正五品 2人
副校理 プキョリ 従五品 2人
修撰 スチャン 正六品 2人
副修撰 プスチャン 従六品 2人
博士 パクサ 正七品 1人
著作 チョジャク 従七品 1人
正字 チョンジャ 正八品 3人

 

五衛と五衛都摠府

当初は、中央軍が全国を五つの地区に分けて防衛体制を構築していました。

この五つの組織は五衛(オウィ)と称されていました。

<五衛>

軍営 通称 兵員(人) 防衛地域
義興衛 中衛 18,400 京畿道・慶尚道・全羅道
龍驤衛 左衛 3,000 忠清道
虎賁衛 右衛 500 黄海道
忠佐衛 前衛 2,500 平安道
忠武衛 後衛 600 咸鏡道・江原道

<五衛の官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
五衛将 正三品堂上官 12人、兼官職
上護軍 正三品堂下官 9人、最高司令官
大護軍 従三品 14人
護軍 正四品 12人
副護軍 従四品 54人
司直 正五品 14人
副司直 従五品 125人
司果 正六品 15人
副司果 従六品 176人
部将 従六品 3人
司正 正七品 5人
副司正 従七品 309人
司猛 正八品 16人
副司猛 従八品 483人
司勇 正九品 42人
副司勇 従九品 1939人

 

五衛を統括していたのが、五衛都摠府(オウィトチョンブ)と呼ばれる組織です。

<五衛都摠府の官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
都総管 正二品 5人、兼官職
副総管 従二品 5人、兼官職
経歴 従四品 6人
都事 従五品 6人

 

五衛は後に廃止され、五軍営(オグニョン)が設置されました。

<五軍営>

軍営 設立(年) 兵員(人) 防衛地域
訓錬都監 1593 1,000 漢陽
御営庁 1623 6,000 漢陽
摠戎庁 1624 20,000 漢陽の郊外と京畿道北部
守禦庁 1626 6,000 京畿道南部と南漢山城
禁衛営 1682 王の近衛機関

 

成均館(ソンギュングァン)

成均館は朝鮮王朝の最高教育機関で今の国立大学に相当し、儒学教育と祭祀(さいし)を執り行っていました。

成均館は高麗に作られた国子監が前身で、高麗の末期の1362年に成均館と改称されました。

朝鮮王朝時代には漢陽(朝鮮の首都)と開城(高麗の首都)の2ヶ所に存在しました。

 

入学するためには、難しい科挙の小科(生進科)に合格する必要がありました。

小科の合格者は初級官僚の資格を得て官史になることができます。

それだけ、合格が難しい試験でした。

ドラマによく登場する進士(チンサ)は、この小科の進士科に合格した人のことです。

 

成均館の学生は基本的に寄宿舎生活を送り、入学後は次の大科(文科)に合格するために、儒教思想に基づく政治理論を学びます。

小科の合格者は240名、成均館での履修を終えて覆試(ボクシ)に臨みます。

覆試の合格者は僅か33人でした。

 

覆試の合格者は、最後に甲、乙、丙の成績順をきめる殿試を受けることになります。

この成績は官僚としての出発点での差となるだけでなく、出世速度にも影響を及ぼしました。

科拳について詳しくは>>朝鮮王朝の科拳制度【官僚の登竜門であった科拳】をご覧下さい。

 

成均館の学生は斎生と呼ばれ、誤った政策に抗議できるほどの強力な自治組織(斎会)を運営していました。

学生とはいえ、将来の国政を担う人材を朝廷は無視することができなかったのです。

<官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
知事 チサ 正二品 1人
同知事 チサ 従二品 2人
大司成 テサソン 正三品堂上 1人(実質的最高責任者)
祭酒 正三品堂下 1人
司成 サソン 従三品 1人
司芸 正四品 2人
司業 従四品 1人
直調 チィカン 正五品 4人
典籍 チョンジョク 正六品 13人
博士 パクサ 正七品 3人
学正 ハクチョン 正八品 3人
学録 ハンノク 正九品 3人
学諭 ハギュ 従九品 3人

知事(知成均館事)と同知事(同知成均館事)は諮問や総監を担当する名誉職的な役職で、実質的な成均館の長は大司成でした。

 

成均館は、ドラマ「成均館スキャンダル」の舞台となった場所です。

現在は、韓国最古の大学として成均館(ソンギュングァン)大学校と呼ばれています。

約2万4千人の学生を抱える名門校でペ・ヨンジュンが通っていましたが、2006年には国民の妹のムン・グニョンが入学して話題になっています。

 

内侍府(ネシブ)

王の世話をする内官が所属していた部門です。

王が登場するドラマには、必ずお付きの内官が登場しています。

所属している内官のはほぼ去勢された宦官(ファンガン)だったといいます。

 

内侍府の官職で品階の最高位は従二品の尚膳(サンソン)でした。

内侍府の最高責任者である判内侍府事(パンネシブサ)と王の居所(大殿)に仕える大殿内官(テジョンネグァン)がこの尚膳(サンソン)に相当します。

<官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
尚膳 サンソン 従二品 判内侍府事、大殿内官
尚醞 サンオン 正三品堂上 1人、王室の世話の監督
尚茶 サンダ 正三品堂下 1人、茶菓接待の管理
尚薬 サンヤク 従三品 2人、王室の薬の管理
尚伝 サンジョン 正四品 2人、王命の伝達
尚冊 サンチェク 従四品 3人、大殿、王妃殿の薛里
尚弧 サンホ 正五品 4人、大殿の鷹坊、弓房他
尚帑 サンタン 従五品 4人、王室の財貨を管理
尚洗 サンセ 正六品 4人、大殿の掌器、掌務他
尚燭 サンチョク 従六品 4人、大殿、王妃殿の門番
尚烜 サンフェ 正七品 4人、世子宮、各宮の門番
尚設 サンソル 従七品 6人、宮殿の補修、宴席他
尚除 サンジェ 正八品 6人、宮中の掃除業務
尚門 サンムン 従八品 5人、宮門の守直
尚更 サンギョン 正九品 6人、日常の世話
尚苑 サンウォン 従九品 5人、宮廷の庭の管理

薛里(ソルリ)は宮廷で食べ物や食材を管理していた官史

尚醞は王室の世話を管理、尚茶は、王、王妃、世子などの茶菓の接待業務、尚薬は王室の薬を管理、尚伝は王命の伝達など官職名から業務の内容を推測できるものが多いです。

また、品階を持たない内官も多くいたようです。

 

初等教育の機関

成均館を経て、官僚を目指す者は7歳の頃から教育機関に通い、勉強を始めました。

しかし、こうした教育機関を利用できるのは、裕福な両班(ヤンバン)の子弟に限られていました。

 

書堂(ソダン)

書堂は最初に通う地元の私設教育機関です。

ここでは、文字や基本的な儒教思想を学習しました。

主な学習書は「千字文」、「童蒙先習」、「小学」、「明心宝鑑」などがありました。

ドラマにはよく「千字文」や「小学」が登場します。

千字文:四字熟語250句から成る1000文字の最も初歩的な漢字の学習書です。
童蒙先習:儒教思想や歴史について書かれた初学者のための入門的な学習書です。
小学:朱子(朱熹)が四書を中心に、子供にとって重要だと思えるものを集めた書物です。日常生活の礼儀作法や忠孝についてなどが書かれています。
明心宝鑑:孔子・孟子・老子・荘子などの金言や名句が集められて書物です。

 

四学(サハク)と郷学(ヒャンハク)

科拳の受験資格である15歳頃になると、国の教育機関である四学や郷学に入学して、本格的な科拳の準備を始めました。

四学は漢陽(ソウル)、郷学は地方に設立された国の教育機関です。

郷学は徐々に衰退して、代わって私設の書院(ソウォン)が発展していきました。

 

書院(ソウォン)

当初、書院は儒教の先賢を祀るための祠堂(しどう)として建てられましたが、子弟の教育の場としても活用されていきました。

書院は朝鮮時代の末期には、国のお墨付きをもらい、全国に約600カ所まで増えていきます。

 

一般的に地方の名士が子供たちの教育を担当しました。

生徒は両班の子弟が中心でしたが、朝鮮時代の後期になると、極稀ですが、一般庶民の子供も入学できるようになりました。

 

書院は政治的な思想や利害を共通する者が集まりやすく、派閥形成の場となり次第に横暴や不正が目立つようになっていきました。

特に、税免除の特権から脱税などの温床となり、国政に対する弊害が大きくなっていきます。

そこで、1871年、興宣大院君政権下で書院撤廃令を発令し、全国の書院を僅か47ヶ所に整理しました。

 

一般的な出世コース

書堂での初等教育を受けてから、官職に就くまでの一般的な道のりは次のとおりです。

7~15歳:初等教育(書堂)
15~20歳:科拳の準備(四学、郷学、書院)
20~30歳:科拳(小科)を受験
25~35歳:成均館に入学
35~40歳:科拳(大科)を受験
40歳頃:官職に就く

 

承政院

承政院(スンジョンウォン)は王命の伝達と臣下の上奏(意見)の報告を王に行う官庁です。

王様直属の機関で、王の秘書的な役割を担っていました。

 

具体的には、王命は臣下に伝達される前に承政院が目を通し、逆に臣下の上奏は承政院がチェックをしてから王に伝達していました。

国政の要の機関です。

中国からの使者の接待、地方民政の監視、王への進言なども行っていました。

 

承政院は都承旨を最高責任者として、左承旨、右承旨、左副承旨、右副承旨、同副承旨の6つの官職から構成されていました。

承旨(スンジ)はこの6つの官職の総称です。

<承旨の一覧>

名称 読み方 品階 備考
都承旨 トスンジ 正三品堂上 最高責任者
吏曹への連絡を担当
左承旨 チャスンジ 正三品堂上 戸曹への連絡を担当
右承旨 ウスンジ 正三品堂上 礼曹への連絡を担当
左副承旨 チャブスンジ 正三品堂上 兵曹への連絡を担当
右副承旨 ウブスンジ 正三品堂上 刑曹への連絡を担当
同副承旨 トンブスンジ 正三品堂上 工曹への連絡を担当

 

内医院、典医監、恵民署

内医院、典医監、恵民署を称して、三医司(サミサ)と呼ばれていました。

 

内医院(ネイウォン)

王や王室の医療を担当する官庁です。

内医院の医員になるためには、科拳の雑科(専門技術職)に合格する必要がありました。

20人程度の医女が働いていました。

<官職と品階>

名称 読み方 品階 備考
都堤調 トチェジョ 正一品 最高責任者、他職と兼務
堤調 チェジョ 従一品、正二品、従二品 他職と兼務
副堤調 ブチェジョ 正三品堂上 承旨と兼務
御医 オイ 正三品堂上 正一品になる場合もある
チョン 正三品堂下
副正 ブジョン 正三品堂下
僉正 チョムジョン 従四品
判官 パングァン 従五品
主簿 チュブ 従六品
直長 チクチャン 従七品
奉事 ボンサ 従八品
副奉事 ブボンサ 正九品
参奉 チャムボン 従九品

都堤調、堤調、副堤調は他の中央官職と兼任され、実務は担当せずに王への報告、提言、人事考課などを行っていました。

 

典医監(チョニガム)

薬剤の調達、管理と医者の教育を担当した官庁です。

宮殿内に提供する医薬品を調達したり、医員を育てるための医学教育を担当しました。

ドラマ「馬医」の第1話で、カン・ドジュンとイ・ミョンファンの二人が典医監で医学を勉強した後に、科拳に合格して、内医院に入っています。

<官職と品階>

名称 読み方 品階 備考
堤調 チェジョ 従一品、正二品、従二品 他職と兼務
チョン 正三品堂下
副正 ブジョン 正三品堂下
僉正 チョムジョン 従四品
判官 パングァン 従五品
主簿 チュブ 従六品
医学教授 ウイハクキョス 従六品
直長 チクチャン 従七品
奉事 ボンサ 従八品
副奉事 ブボンサ 正九品
医学訓導 ウイハクフンド 正九品
参奉 チャムボン 従九品

 

恵民署(ヘーミンソ)

庶民の医療を担当する官庁です。

庶民の病気の治療、薬の調合や販売を担当しました。

医女の教育を担当、内医院の医女もここで教育されます。

恵民署にも30人ほどの医女がいました。

<官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
提調 チェジョ 従一品、正二品、従二品 2人
主簿 チュブ 従六品 2人
医学教授 ウイハクキョス 従六品 1人
直長 チクチャン 従七品 1人
奉事 ボンサ 従八品 1人
医学訓導 ウイハクフンド 正九品 1人
参奉 チャムボン 従九品 4人

 

活人署(ファリンソ)

医療行為や衣食の提供などで貧民の救済を担当する部署でした。

伝染病発生時の一時的な対策医院としても活用されました。

18世紀に入って、徐々に規模は縮小され、最終的には恵民署に統合されています。

<官職と品階>

官職 読み方 品階 備考
提調 チェジョ 従一品、正二品、従二品
別提 ピョルチェ 従六品
参奉 チャムボン 従九品

 

御医と首医

御医とは「王または王族の治療を担当した医員」のことです。

昼夜、常に対応できるように王様の担当だけでも数名いたと考えられます。

 

一方、首医は三医司(内医院・典医監・恵民署の総称)の長、つまり、医官のトップのことです。

但し、御医も首医も正式な役職名ではなかったようです。

しかし、実録にも記載があることから、王や王族を担当できる医員を御医、医官のトップを首医と俗称的に呼んでいたと考えられます。

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