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ミスターサンシャインの実話【ユジン・チョイは実在した人物か?】

朝鮮時代末期を時代背景としたドラマ「ミスターサンシャイン」

ミスターサンシャインの実話とは?

また、ユジン・チョイは実在したのか?

詳しくご紹介していきます。

先にユジンついて知りたい方は>>こちら

 

ミスターサンシャインの実話

ミスターサンシャインは朝鮮末期の史実をベースにして、架空の人物の生涯を織り交ぜたフィクションです。

ユジン・チョイのモデルがファン・ギファンであることは、制作者は否定していますが、ヒントにしていることは間違いありません。

まずは、物語のベースとなった史実をご紹介し、その後にファン・ギファンについてご紹介していきます。

 

まずは、時代背景から

ミスターサンシャインの時代背景

ミスターサンシャインの始まりは1871年、朝鮮王朝時代の末期です。

幼い王・高宗に代わって実権を握っていた父親の興宣大院君は、開港を迫る西洋諸国に対して強固に鎖国政策をやめませんでした。

しかし、世界はすでに開国の時代に入っていたのです。

 

それでは、物語の背景となった史実を見ていきましょう。

辛未洋擾/アメリカの侵攻

1871年、鎖国政策をとる朝鮮にアメリカが開港を要求してきました。

ドラマの冒頭で描かれていた激しい戦闘

辛未洋擾(シンミヤンヨ)です。

 

5年前のジェネラル・シャーマン号焼き討ち事件の謝罪と通商を求めたアメリカの再度の江華島侵攻でした。

戦闘はアメリカの圧倒的な勝利でしたが、大院君の開国拒絶により通商は実現しませんでした。

 

この戦闘で撮影されたフェリーチェ・ベアトの写真は朝鮮最古の現存する写真です。

<フェリーチェ・ベアトが撮影した写真>

ドラマでは、奴婢のユジン・チョイが宣教師ユセフに助けられ渡米するストーリーとなっています。

 

アメリカとスペインの戦争

1898年2月15日、ハバナ湾でアメリカ海軍の戦艦メイン号が爆発して沈没、266名の乗員が亡くなった事故が発生しました。

この事件がキッカケで、アメリカとスペインの戦争が始まっています。

ドラマで、アメリカの軍隊に入隊したユンジが上官のカイルを助けだしたのはこの戦争です。

 

1895年の朝鮮

1895年、ドラマでユジンがアメリカ大使として赴任した朝鮮は、混乱と激動の時代でした。

前年に起こった甲午農民戦争をきっかけに日清戦争が勃発、その結果、日本が勝利して朝鮮への影響力を強めていました。

 

明成皇后は日本に対抗するためにロシアと接触を図りましたが、日本側に暗殺される乙未事変が発生、身の危険を感じた高宗はロシア公館に亡命しています。

ドラマにはこの事件の描写はないものの、会話の中で皇后殺害や国王の亡命について触れられています。

 

大韓民国の誕生

ロシア公使館から戻った高宗は、清から独立したことを内外に示しために、国号を「朝鮮」から「大韓」に改めました。

1897年10月、大韓民国の誕生です。

高宗は10月13日に清の皇帝と同格の皇帝に即位しました。

しかし、「大韓民国」は「朝鮮」から国名を変えただけの、名ばかりの国に過ぎませでした。

 

日露戦争と日韓議定書

1904年2月10日に日本とロシアが開戦し、日露戦争が始まりました。

2月22日には、日本が韓国にロシアとの戦争を有利に進めるための日韓議定書の調印を強制しています。

議定書の内容は、韓国に日本の軍事行動の許可や土地の接収を認めさせるものでした。

ドラマでもコ・エンシの家の敷地が鉄道の線路を引くために無断で没収されたり、工藤陽花のホテルが日本軍に勝手に使われたりしたのは、全てこの議定書によるものです。

 

日韓協約と伊藤博文の韓国統監就任

1904年、第1次日韓協約で財務・外交に日本人顧問を置くと、1905年には第2次日韓協約を締結、韓国の外交権を奪って、韓国を日本の保護国としました。

第2次日韓協約に賛同した韓国の五名の閣僚を批判して乙巳五賊(いっしごぞく)と呼んでいます。

 

第二次日韓協約の締結に賛同した韓国の五名の閣僚とは次の閣僚です。

<乙巳五賊>
李完用:学部大臣
李根澤:軍部大臣
権重顕:農商工部大臣
朴斎純:外部大臣
李址鎔:内部大臣

<乙巳五賊の写真>

韓国内ではチンイルパ(親日派、売国奴)の扱いを受けています。

このとき、外交権を譲らぬ高宗を伊藤博文が威嚇、その後、韓国に統監府を設置して、伊藤博文が初代韓国統監に就任しました。

ドラマの第22話では、高宗に謁見する伊藤博文が描かれています。

 

ハーグ密使事件と高宗の譲位

1907年7月、高宗はオランダのハーグで開催された第2回万国平和会議に3人の密使を派遣して、日本の不当性を訴えようとしましたが、大韓民国の出席は拒否されました。

朝鮮統監伊藤博文は、特使の派遣は協約違反であると高宗の責任をきびしく追求しました。

 

1907年7月20日、高宗は強制的に譲位させられます。

このとき、高宗の譲位を押した韓国の7人の閣僚は丁未七賊(ていびしちぞく)と呼ばれています。

<丁未七賊>
李完用:内閣総理大臣
宋秉畯:農商工部大臣
李秉武:軍部大臣
高永喜:度支部大臣
趙重応:法部大臣
李載崑:学部大臣
任善準:内部大臣

彼らは、乙巳五賊同様に韓国内ではチンイルパ(親日派、売国奴)と呼ばれています。

李完用(リワンヨン)は乙巳五賊の1名でもありました。

ドラマの22話では、ハーグ密使事件の責任を追求された高宗の譲位と軍隊の解散式での惨劇が描かれています。

 

大韓帝国の崩壊

更に、1907年7月24日、第3次日韓協約が結ばれ、韓国軍隊は解散、外交権だけでなく内政権も剥奪されてしまいます。

官僚の任命、政策の施行は日本の許可を得なければできなくなりました。

大韓帝国は完全に日本の支配下に置かれました。

大韓帝国の崩壊です。

 

全国的な抗日義兵闘争

ミスターサンシャインは朝鮮を対外の敵から守る義兵の戦いの物語でもあります。

ドラマにはエシンを始め多くの義兵が登場しています。

<豆知識>義兵とは
義兵(ウィビョン)とは、国の危機を救うために自発的に立ち上がった民衆の兵士のことです。朝鮮で義兵の活躍として知られるのは、13世紀のモンゴルに対抗した義兵、16世紀に豊臣秀吉の朝鮮出兵に対抗した義兵、そして、この19世紀末の日本統治に対抗した義兵が有名です。

ドラマではイギリスの記者マッケンジーが義兵の写真を撮る場面があります。

実はマッケンジーは実在した記者で、彼が撮った義兵の写真は教材に載るほど有名な写真です。

<マッケンジーが撮った義兵の写真>

撮影したのは1907年、翌年には義兵の活動は朝鮮全域にまで拡大していきます。

 

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ミスターサンシャインのその後

ドラマはユジンが自分の身を犠牲にしてエシンを助けて二人の物語は終わっています。

ユジンが亡くなった年は1907年、その後の実話をご紹介します。

 

義兵闘争は1907年の韓国軍解散後に激化し、1909年には全国的な反日運動のピークを迎えました。

しかし、伊藤博文が暗殺されると義兵弾圧の軍隊が強化され、義兵闘争は次第に鎮圧されていきます。

1910年に韓国併合条約が締結され、韓国は完全に日本の植民地となりました。

 

ドラマでは1919年に成長したトミが漢城の外国人墓地でユジンのお墓をお参りする場面が登場します。

また、エシンはリーダーとして満州で義兵の訓練をする姿が描かれていました。

<ミスターサンシャインのエシンの雄姿>

大韓民国が独立するのは、それから29年後の1948年、ようやく、エシンが言った「独立した祖国」となったのです。

 

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ユジン・チョイは実在した人物?

脚本家が否定するように、ユジン・チョイには実在のモデルはいません。

 

ファン・ギファンがモデル?

ファン・ギファン(黄玘煥)がユジン・チョイのモデルと言われていますが、朝鮮に戻り、義兵を助けて独立運動をしたという記録はありません。

ファン・ギファンとユジン・チョイの共通点は「アメリカに渡った韓国人であること」「米軍に入隊したこと」です。

 

ミスターサンシャインの制作者も「ユジン・チョイにモデルはいない」と言っています。

従って、私はユジン・チョイはファン・ギファンをヒントに創造された架空の人物というのが正しいと考えます。

 

ファン・ギファンの生涯

1888年に漢城部(現ソウル特別市)で生まれたァン・ギファンは、1904年にハワイ経由でアメリカに渡っています。

1917年、アメリカに留学中のファン・ギファンは米軍に志願、第1次世界大戦に参戦しました。

<独立活動家のファン・ギファン>

1919年、フランスで開かれたパリ平和会議で独立運動家キム・ユジクに出会うと、大きな刺激を受け、独立運動に傾倒していきます。

大韓民国臨時政府の外交官となったファン・ギファンはヨーロッパとアメリカで韓国の独立のため活動しました。

そして1923年、アメリカのニューヨークで40歳の若さで亡くなります。

 

外国の地で亡くなったファン・ギファンが遺骨として韓国に戻ってきたのは、亡くなってから100年後のことでした。

ファン・ギファンの遺骨が韓国に戻れたのは、ミスターサンシャインに登場するユジン・チョイへの韓国民の関心が高まったことが大きな要因でした。

 

まとめ

「ミスター・サンシャイン」は、歴史的な出来事と架空のキャラクターを巧みに組み合わせた作品です。

ユジン・チョイは実在の人物ではありませんが、アメリカを第二の祖国として戦った韓国人の姿は、ファン・ギファンを思い出させます。

 

ドラマが描いたように、朝鮮は激動の時代にあり、その中で多くの人々が祖国を守るために戦いました。

ミスターサンシャインは視聴者が過去の歴史に触れ、義兵や独立運動への理解を深めるきっかけになる作品といえます。

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