キム・ユジョンが演じた天才絵師のホンチョンギ(洪天起)は実在した人物でした。
ホンチョンギはどんな人物だったのか?
詳しく調べてみました。
ホンチョンギ(洪天起)はどんな人物
ホンチョンギ(洪天起)は宮廷の図画署で働く女性絵師で絶世の美女であったと記録されています。
しかし、ホンチョンギの家族や出生に関する記録は全くありません。
実は、ホンチョンギの記録は成俔(ソンヒョン)が書いた随筆集の慵斎叢話(ようさいそうわ)にごく僅かの記載があるだけです。
図画署で働く絶世の美人女性絵師ホンチョンギ
慵斎叢話には、文臣であり学者の徐巨正が若い頃に、捕まった役所でホンチョンギを見たことが記載されています。
徐巨正はすぐに釈放され、ホンチョンギを長い時間見ることができなくて悔しがったそうです。
この僅かな情報から小説家のチョン・ウングォルは小説「ホン・チョンギ(紅天機)」を書き上げました。
大ヒットドラマの「宮廷女官チャングムの誓い」のように残された少ない記録から創作する作家の創造力には驚かされます。
なお、徐巨正は後に、第九代国王・成宗の指示で、詩集「東文選」をまとめているので、ホンチョンギの時代は成宗の時代と推定できます。
チョン・ウングォルはどんな小説家?
実は、チョン・ウングォルは「トキメキ☆成均館スキャンダル」や「太陽を抱く月」などの大ヒットドラマの原作となる小説を書いた女性小説家なんです。
しかし、その実態は謎のベールに包まれています。
その理由は、チョン・ウングォルはインタビューなどは一切断り、出版社以外との接触をしない方だそうです。
分かっているのは30代後半の女性小説家らしい。。。ということだけです。
「謎の大ヒット小説家」
益々、作品に興味が湧いてきますよね。
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ホンチョンギの元になった慵斎叢話とは
慵斎叢話(ようさいそうわ)は学者である成俔(ソンヒョン)が書いた随筆集です。
成俔は世宗の時代に生存した博識のある学者でした。
著者の成俔とはどんな人物か?
・生年1439年~没年1504年
・朝鮮王朝初期の学者で名臣
・小さい頃から聡明
・23歳で科挙に合格して要職を歴任
1504年に慵齋叢話を書いていますが、朝鮮の音楽を集大成した音楽大百科事典と言われる「楽学軌範」の編集責任者でもありました。
政治、文科、教育などに大きな功績を残した成俔は理想の官僚として死後も多くの尊敬を集めたといいます。
ホンチョンギが記録されている慵斎叢話とは?
慵斎叢話は成俔が当時の文化,詩や書画の話,人物評,歴史上の逸話、実際にあった事実などを記録した随筆集です。
自分の考えを書いた本ですが、朝鮮初期の政治・社会・制度・文化などについて知ることができる重要な資料です。
朝鮮時代の随筆集としては、特に優れたものと評価されています。
随筆集とは、作者の体験や読書から得た知識をもとに、感想や意見をまとめた散文集のことです。
今で言うエッセイです。
第1巻 わが国の学芸と風俗
第2巻 礼文を支える人びと
第3巻 高麗から朝鮮へ
第4巻 わが朝は多士済々
第5巻 禍福門なし
第6巻 さまざまな人びと 妓生 僧侶
第7巻 及第した文人王の下で
第8巻 わが成氏につながる人びと
第9巻 時を得る、時を得ない
第10巻 朝鮮社会の内と外 日本と女真など
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ホンチョンギが所属した図画署とは
図画署(トファソ)とは、宮廷で絵の制作を担当する部署です。
具体的には宮殿を飾る装飾画、国王や高官の肖像画、宮廷での行事の記録画などを描くのが仕事です。
絵画の種類も肖像画、記録画、山水画、花鳥画など多岐に渡ります。
図画署は六曹の中の礼曹(イェジョ)が管轄する比較的小さな組織でした。
礼曹が宮廷の儀式・外交・教育を担当していたからです。
図画署の責任者も礼曹の長である礼曹判書が兼任していました。
・善画(従六品)1名
・善絵(従七品)1名
・画史(従八品)1名
・絵史(従九品)2名
・画員(品位なし)20名
ホンチョンギは画史(従八品)だったと言われています。
イ・サンに出てきた人物画は得意だが仕事はイマイチのファサと同じ品階です。
女性絵師を扱ったドラマ
女性絵師を扱ったドラマは「風の絵師」と「イ・サン」が有名です。
風の絵師の女性絵師
18世紀に実在した2人の天才画家の金弘道(キム・ホンド)と申潤福(シン・ユンボク)をテーマにした物語です。
シン・ユンボクを韓国の妹と言われる ムン・グニョンが演じていますが、実在のシン・ユンボクは男性です。
しかし、描いた絵画は存在しますが、シン・ユンボクに関する資料は全くありません。
残された絵画は男女間の愛情を扱った繊細で粋な風俗画が多く存在することから、風の絵師ではシン・ユンボクを女性として登場させています。
イ・サンの女性絵師
イ・サンでは後に、正祖の側室となるソン・ソンヨンが図画署で働く女性絵師として登場します。
ソン・ソンヨンの父親はかつて図画署で働いており、彼女も絵の才能がある設定になっていますが、これはドラマでのフィクションです。
シン・ユンボクもソン・ソンヨンも女性絵師であることはフィクションですから、ホンチョンギが朝鮮時代唯一の女性絵師です。
まとめ
ホンチョンギは図画署に実在した女性絵師ですが、残された資料も無く謎多き女性でした。
図画署で働いていたせいか、ホンチョンギが描いたと言われる絵画も見つけることができません。
恐らく、宮廷のどこかの装飾画や記録画などにその形跡を見ることができるのでしょう。
ただ、ホンチョンギが朝鮮時代唯一の認められる女性絵師であったことは事実のようです。