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ホンチョンギは実在した?|慵斎叢話に残る女性絵師・洪天起

キム・ユジョンが演じた天才絵師ホンチョンギ(洪天起)は、史料に名前が残る実在した人物です。ただし、その記録は極めて少なく、人物像の大半は謎に包まれています。

この記事では、ホンチョンギの実在性、記述されている史料、ドラマや小説との違いについて、史料をもとに詳しく解説します。

ホンチョンギ(洪天起)はどんな人物

ホンチョンギ(洪天起)は宮廷の図画署で働く絵師で美しい女性であったとされています。

彼女の記録は、成俔(ソン・ヒョン)が著した随筆集「慵斎叢話(ようさいそうわ)」に、ごく短い逸話として記されているのみです。

畫史洪天起女子。顏色一時無雙。
<引用元:慵斎叢話>

<訳>画史の洪天起は女性であった。その容姿は当時に並ぶ者がないほどであった。

ホンチョンギの家族、出生地、生没年などの基本的な人物情報は一切伝わっていません。

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慵斎叢話に記された洪天起の逸話

「慵斎叢話」によると、文臣で学者の徐巨正は若い頃、役所に拘束された際に偶然ホンチョンギを目にしました。しかし、ほどなく釈放されたため、彼女のそばに長く居ることはできませんでした。そのことへの未練から、徐巨正は表向きは正論を述べながら、実際には皮肉を込めた言葉を口にしたと記されています。

分辨曲直。當徐徐爲之。何勿遽如是。蓋恨不久在洪女之側也。
<引用元:慵斎叢話>

<訳>是非を見極めることは、ゆっくりと行うべきである。どうしてこのように性急なのか。これは洪氏(女性)のそばに長くいられなかったことを恨んでの言葉であった。

徐巨正は後に、第九代国王・成宗の指示で、詩集「東文選」を編纂しています。このことから、ホンチョンギが活動していた時代は成宗の時代と推定されます。

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「慵斎叢話」とは

慵斎叢話(ようさいそうわ)は朝鮮前期の学者・成俔(ソンヒョン)が書いた随筆集です。1504年に完成したとされます。

慵斎叢話の史料的な価値

慵斎叢話は成俔が当時の文化,詩や書画の話,人物評,歴史上の逸話、実際にあった事実などを記録した随筆集です。筆者の見聞や体験をもとにした記録ですが、朝鮮初期の政治・社会・制度・文化を知るうえで評価の高い史料です。

成俔とはどんな人物か?

成俔は世宗から成宗の時代に活躍した官僚・学者で、政治、文科、教育などに大きな功績を残しました。朝鮮の音楽制度を体系化した「楽学軌範」の編纂責任者としても知られています。

・生年1439年~没年1504年
・小さい頃から聡明、23歳で科挙に合格
・朝鮮前期の学者で名臣
・朝鮮音楽の集大成・楽学軌範を編集

ホンチョンギが所属した図画署とは

図画署(トファソ)とは、宮廷で絵の制作を担当する官庁です。具体的には宮殿を飾る装飾画、国王や高官の肖像画、宮廷での行事の記録画などの製作を担っていました。

図画署は大規模な官庁ではありませんが、国家儀礼を支える重要な役割を担当していました。

図画署の官位例

ホンチョンギは画史(従八品)だったと推定されています。

・善画(従六品)
・善絵(従七品)
・画史(従八品)
・絵史(従九品)
・画員(品位なし)

原作者・チョン・ウングォルはどんな小説家か?

チョン・ウングォルは、「トキメキ☆成均館スキャンダル」や「太陽を抱く月」など、数々の大ヒットドラマの原作を手がけた女性小説家です。

本人は一切メディアに登場せず、詳しい経歴は明らかにされていませんが、史料の乏しい歴史人物を巧みに物語化する手法に定評があります。

小説「ホン・チョンギ(紅天機)」も、わずかな記録をもとに人物像を大胆に描き出した作品と言えます。

女性絵師を扱ったドラマ

女性絵師を題材としたドラマとしては、「風の絵師」や「イ・サン」が広く知られています。

ただし、「風の絵師」で描かれる申潤福は史実では男性であり、「イ・サン」に登場するソン・ソンヨンが絵師である設定も、あくまでドラマ上の創作です。

そのため、史料上、図画署に所属した女性絵師として名前が確認できる人物はホンチョンギのみとなります。この点こそが、女性絵師の実在記録に着目したドラマ「ホンチョンギ」の最大の特徴と言えます。

まとめ

ホンチョンギは、図画署に所属していた実在の女性絵師ですが、残された史料はごくわずかで、その生涯の多くは謎に包まれています。

宮廷に仕えていた立場上、彼女が手がけたとされる絵画を特定することはできませんが、宮中の装飾画や行事の記録画の中に、その仕事の痕跡が残されている可能性はあります。

ドラマや小説で描かれる人物像の多くは創作ですが、記録上、朝鮮時代に確認できる女性絵師がホンチョンギであるという事実は、史料によって裏付けられています。

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